部屋を出て、廊下を歩いて。

部屋の角をちょうど曲がったところで。

「・・・あはははっ。雪奈はー?」

「うん。そーなのっ!今探し中~」

見覚えのある後ろ姿。

聞き覚えのある声。

「じゃあ狙っちゃおうかな~♪なんてw」

「比呂は彼女いないの~?」

「秘密~♪」

「教えてよ~ッ。あたし比呂くんだーい好きなんだから~」

「俺も好きだよー?」

・・・やっぱり比呂だ。

大分酔ってる・・・。

・・・隣にいる女は誰?

なんで彼女いるの?って質問に、はっきり答えないの?

比呂は普段、面白いけどこんな軽い感じじゃない。

「好きだよ」って他の女の子に言うの?

・・・ねえ・・・。

あたしは、トイレに行かずに部屋へ戻った。

何もなかったように平然としてた。

ちゃんとニコニコ笑ってた。

・・・つもりだったのに。

拓実はあたしのこと、すごく分かってるんだね。

そんな演技はすぐに見破られて。

「・・・なぁ。何かあった?急に様子変」

「・・・何もないよ~?」

「嘘。言えよ」

急に真剣な目つきに変わる。

あたしはちゃんと話した。

さっきあったこと。

前から比呂のこと色々相談してたから、細かい説明はいらなかった。