拓実の腕の中は、比呂や今までの人とは違って、何だか落ち着いた。

ぽろぽろこぼれた涙を拓実は拭ってくれて。

「拓実ぃ・・・」

今、あたしすっごく汚い顔してるよね・・・。

こんなときまでやっぱり見栄えは気になる。

「美沙・・・。もう、無理しなくていいんじゃねぇか?」

「でも、あたし・・・」

拓実は、じっとあたしの目を見つめて。

優しくて、ちょっとだけ切ない目をしてた。

「拓実・・・?」

拓実の整った綺麗な顔。

サラサラのミルクティー色の髪。

甘い香水と拓実の匂い。

全部、知ってる。

よく使ってるワックスも、

いつも通ってる美容院も、

お気に入りの香水も。

懐かしいな・・・。

だんだん近づく顔の距離。

拓実の高い鼻がちょっと当たって、

唇がゆっくり重なった。