ベンチの真後ろに立った時、翔はまだ私に気付いていないようで、呑気に居眠りをしていた。
すぅっと息を吸い込み、お腹の底から力一杯声を出した。
「わっっ!!!!!!」
「うおわぁっ!?」
翔は跳ね起きると、バランスを崩してベンチから転がり落ちた。
「アハハハハハ! 翔って全然学ばないよね」
「お前もな…」
むくりと起き上がった翔は膝に手を置きながらよいしょと立ち上がる。
驚かした時ベンチから転がり落ちるのも、立ち上がり方も、立ち上がる時苦笑するのも、何から何までいつもと同じだった。
そんな些細なことが今日の私を嬉しくさせる。
それだけがいつもと違っていた。