けれど翔は私から離れるように後ろへ一歩下がった。 そのせいで私の手は空中で行き場所を無くし、宙を彷徨う。 桜の影に入ってしまった、翔の顔は影になってしまってよく見えない。 「……………翔?」 私は困惑の色を隠せず呼び掛ける。 その影は返事もせずに立ち続ける。 「翔!」 なかなか返事を返さない翔に痺れを切らして翔に近付いて腕を掴む。 ————けれど、 「…え————」 私の手は翔の腕にかすることなく、宙のみを掴んだ。