空閑が、こぼれそうなくらいに
入れたグラスを慎重に持ってくる。

あんなに入れなくてもよかったのに。

「ほい!」

「よくこれもってこれたなー。
絶対こぼすんじゃん!」

「ナツメ犬飲みしてー」

「やだね。」

でも、結局犬飲みっぽい飲み方をしてしまう。
ここまで入れられたらしょうがないって。

「いい子いい子!」

「やめろ。バカ。」

「バカって言ったほうがバカなんだよー」

「幼児?」

「18歳だ!」

その白スーツで胸張って言うなよ…
とか思ってくるけど。

やっぱ楽しい。

散々バカやってたなぁ。

「ナツメは、ここから離れるんだ?」

「うん、まぁね。100キロくらい離れたとこ。」

「んなっ、ちゃんとどこか教えろよー」

「嫌だよ。いつかあんたが路頭に迷ったときに
物乞いにこられたら困るからな。」

「そんなことしねぇよー。
なっ、だから教えてくれ!」

「嫌。」

ずるずると、コーラを飲んだ。

「あーあー、金なくなった。」

本当に空っぽになってしまったらしい
財布を、逆さまに空閑が振る。

「あたしのほうがなくなった。
会計のときみんな金足らないなんて。」

すごくたくさん食べて割り勘にしたは
いいけど、半分はあたしが払った。

「ごめんごめん。今度返す!」

「それって、毎日聞いてる感じすんだけど。」

「これからは、もう聞かないで済むじゃん♪」

もう春なのに、とても寒く感じた。
電灯に照らされて、桜が見えた。