「美月、これからどうするの?」

試合が終わって、歓喜に沸くサポーター達が帰って行く中、椅子に座ったまま携帯を取り出したおねぇーに声をかけられた。


「“どうする”って?」

私は、未だに消される事のない、電光の得点板をぼんやり眺めていた。


「川崎君に会いに来たんでしょう?」

ゆっくり視線を移した先のおねぇーは、丁度携帯をパタンと閉じたところで……。

何も言えないでいる私に、笑いながら声をかける。


「試合前に、航太からメールがきてさ」

「航太君から?」

「うん。やっぱり川崎君の様子がおかしいから、試合終わったら川崎君の家に行くって」

「……」

「美月も、一緒に行こう?」

そして、おねぇーの口から発せられた次の一言に、私は驚いて目を見開いた。


「だって、好きなんでしょう?」

未だにざわつく、スタジアムの中。

まるでここだけ違う空間みたいに、彼女のその声が、やけに鮮明に聞こえる。


もういいのかな……?

だって、辛すぎる。

こんなにも膨れ上がった気持ちを、この胸に一人で抱え込むのは辛すぎるんだ。


「うん……。大好き」

彼への気持ちを、こうして口に出したのは初めてだった。

それに、人に話すのも。


その言葉を口に出した途端、喉の奥がグッと痛くなって……

「泣くほど好きなんだね」

おねぇーのその一言で、ようやく、自分の頬を涙が伝っている事に気が付いた。


「うん。大好き。信じられないくらい、大好きみたい……っ」

今まで抑え込んでいた反動からなのか、一度言葉にしてしまったら、もう止める事が出来なくて……。


言葉と一緒にポロポロ零れる涙で、視線の先の得点板のその文字がどんどん滲んで、キラキラ、キラキラ輝いていた。