大通りに出てタクシーに乗ろうか悩んだけど、金曜日のこの時間なら、電車の方が断然早いはず。

そう思って駅に駆け込むと、丁度急行がそこに滑り込んだところで……。


「はぁー……っ」

少し混み合う電車の中、ドアに寄りかかった私は、久々に走って乱れた呼吸を整えようと、息を吐き出しながら窓に目をやった。


そこには、昨日よりも微かに欠けた、黄色い月。

稜君は今、この月を見上げながら、どんな気持ちでピッチに立っているんだろう。

いつもは早く感じるこの急行電車さえも、今日は嫌になるくらい遅く感じてしまう。


「……早くっ」

私が行ったところで、何も変わらないかもしれない。

だけど、私とのメールのやり取りが、心休まる時間だと言ってくれた稜君。


もしそれが本当だとしたら、ほんの少しでもいい。

ほんの少しでもいいから、稜君の力になりたい。