それからまたポツポツと、少しずつ思い出を噛みしめるみたいに、お婆ちゃんの話をしてくれた稜君。
昔の事も、最近あった事も。
「ばーちゃんは、俺のサッカー観るのが大好きでさ」
いつの間にか膝の上でウトウトしていたポーキーをそっと抱き上げベッドに降ろすと、稜君は再び私の隣に腰をおろし、続きの言葉を口にする。
「だから、明後日の試合は絶対に勝ちたいんだ」
その言葉の続きが、何となく分かってしまったから……。
「きっと、ばーちゃんに観せられる最後の試合だから」
だからこんなに、胸が痛んで仕方がない。
無理をして瞳を細めながら笑う稜君の後ろには大きな水槽があって、その中を、あの花火の日、彼に助けられた朱色の金魚達が、とても気持ちよさそうに泳いでいた――……。