嬉しそうに、すごく幸せそうに、お婆ちゃんの話をしていた稜君。


“お婆ちゃん、大好きなんだね”

そう言った私に、

“俺、超ばーちゃんっ子!”

にっこりと笑ってそう告げた、彼の顔が浮かぶ。


隣で細く長い息を吐き出した稜君の気持ちを考えると、胸が張り裂けそうに痛かった。

自分から聞いたくせに、彼を救う言葉が上手く出てこない。


どうしたらいいんだろう。

どうしたら彼の気持ちを、少しでもいいから、楽にしてあげられるんだろう。


考えても出ない答えを探す私の気持ちに、稜君は多分気が付いたんだ。

俯いたまま何も言えないでいた私の頭をポンポンと撫でて、優しく笑った。


「ありがとう」

「……っ」

私は何もしてない。

何も出来てない。


悔しいのか、悲しいのか。

頭を左右に振ることしか出来ない私を見てフッと笑った稜君は、

「もうしばらくそんな状態だから、ある程度は覚悟してる。だから、大丈夫だよ」

柔らかい声でそう言うと、またゆっくりと、窓の外に視線を移したんだ。


「最近出来るだけ、練習の合間見て病院に行くようにしてたんだけど」

しばらくボーっと窓の外を眺めたあと、またポツリと話し始めた稜君に視線を向ける。


「……そうだったんだ」

“ゴハンとか、家でまともに取る時間もないみたい”

さっきのおねぇーの言葉が、言葉を頭に浮かぶ。


稜君はきっと、サッカー以外の時間の大半を、大好きなお婆ちゃんの為に使っているんだ。


「ごめんね」

「え?」

「私、何も知らなくて……。メール大変だったでしょう?」

「あぁ!」

私の謝罪の言葉に、稜君は心なしか、さっきよりも少し元気な声を出す。


「それを謝られると、かえって辛いかも」

「どうして?」

「俺ね、美月ちゃんとメールしてると落ち着くんだよ?」

「……」

「最近試合も多くて、ずっと気ぃ張ってるから……。唯一、心が休まる時間!」


そんな風に言って、ふわりと笑うから、何だか泣きそうになってしまった。

私のメールが、少しでも稜君の辛い気持ちを楽にしていたのなら本当に嬉しいって、心の底から思った。