「じゃー、美月置いて行くんで!」

「は?」

考え込んで下を向いていた私の頭上から発せられた、おねぇーの一言に、一瞬ポカーンとする。


「美月お酒強いから、呑み明かしちゃって下さい」

にっこり笑顔で告げた言葉を聞いた稜君が、私にパッと視線を向けた。


「美月ちゃん、明日仕事?」

「仕事は、休みだけど……」

思いもよらない展開に、歯切れの悪い返事をしながら、おねぇーに視線を向けたが、おねぇーは“ヨロシク頼んだ!”と言わんばかりの表情で、うんうんと頷くばかり。


稜君の話を聞いて、可能であれば元気がない理由を聞き出してって事なんだろうけど……。

彼に特別な感情を持ってしまった私にとって、このシチュエーションはちょっと困りものだ。


それでも稜君が嬉しそうにニコッと笑うから。


「じゃー、ちょっとだけ付き合って! 帰りは送ってくからー!」

「う、うん。わかったー」

私はどうしたって、頭を縦に振るしかなかった。


それから少し休んだ後、おねぇーと航太君は、稜君になのか、私になのかわからない“じゃー、ヨロシク!”という言葉を残し、本当にさっさとホテルに帰ってしまった。