「はぁ……」

やっと休憩に入った私の手には、なかなか画面を覗かないでいる携帯電話。

今、向こうは夜と朝の間くらいの時間で、いつもだったらこの時間に着信とか、メールがきている事はほとんどない。

だから、何も緊張なんてしなくていいはずなのに……。


「よしっ!」

よくわからない気合を入れた私は、ゆっくりとその画面をタップした。

“新着メール 1件”


「……あ」

そのメッセージが目に入った私は、ゴクリと息を呑む。

それが稜君からであって欲しいという気持ちがあるのに、もしそうだったら、見るのが怖い。

どうしようもなく、矛盾する感情。


迷惑メールかもしれないじゃん。

気を取り直して、何かを自分に言い聞かせるように、ゆっくりと受信ボックスを開く。


「……」

その未読メールの差出人の名前を見て、携帯を持つ手に力が入った。


「ふー……」

一度目を閉じ、息を大きく吐き出した私は、ボタンを押してゆっくりとそのメールを開く。


【ごめん】
その一言で始まった、稜君からのそのメール。


【美月ちゃんの気持ちは、凄く嬉しいよ】

そして、次に続いたその言葉に、私はギュッと瞳を閉じた。


こんな所で、泣いちゃダメだ。

震える手で、大きく軋む心臓を押さえる。


【でも、少し考えさせて欲しい。これからの美月ちゃんと、俺の事も含めて】


――これからの、私と稜君の事?

電話だったら、何らかの感情が伝わったのだろうけれど、淡々と綴られたメールの文章からは、何の感情も読みとれない。

だから、どうしても悪い方に、私の意識は向いてしまうのだ。