どうしてこんな事になったんだろう。

稜君の傍で、彼を支えたいと思う私と、不安定な自分の将来に、私を巻き込みたくないと思っている稜君。


相手を幸せにしたいのか、自分が幸せになりたいだけなのか。

それがわからないから私達は、その一歩を踏み出せないのだと思う。


仕事をしていても、ずっと頭の中で、昨日の稜君の声が響き続けている。

初めて私に向けられた怒鳴るようなその声と、落とされた小さな溜め息。

思い出す度に目頭が熱くなって、涙が出そうになる。

でも、こんな所で泣くわけにはいかない。


――杉本さんも見ている。

朝会った瞬間、まるで私の心の中を覗き込むように目をじっと見つめたあと「おはよう」と、何事もなかったかのように挨拶をした杉本さん。

やっぱり彼の感情は読み取りにくい。