家に帰った私は、「ただいま」も言わずに階段を駆け上がって、自分の部屋のテレビの前に座り込んだ。

そして、震える指で電源を入れる。

“パチン”という音がしてから、画面に光が灯るまでのその数秒が、いつもよりも長く感じてもどかしい。


――早く!!

息が上がって、苦しくなった胸元をギュッと握りしめた私は、

「何……これ」

瞳に映ったその光景に、ただただ言葉を失った。

ドンドンと、胸の辺りを内側から誰かに殴り付けられているような、そんな感覚。

カタカタと震えだす手で、口元を押さえた。


一体、何があったの?

辛うじて理性を留めている頭の一部で、その映像はリプレイで、四十分前――丁度私が、杉本さんと話をしていた時のものだという事は理解出来た。


「何が……あったの?」

上手く言う事を聞かない指先で、乱暴にリモコンのボタンを押す。

何とか録画されていた映像を呼び出して、再生をしたけれど、じれったくなるような早送りに思わず口調が荒くなってしまう。


「違う!! もっと、後ろ……っ!!」

だってもう、意味が解らない。

どうしてこんな事に?


――“彼、大変な事になってるみたいだよ”。

さっきから杉本さんの言葉が、うるさいくらい、何度も何度も頭の中で繰り返される。

“これ”に、稜君が関係してるの?


「……っ」

早送りをしていた映像をピタリと止めた私の身体は、今まで経験した事がないくらい、ガタガタと震えて……。

その画面を呆然と見つめる私の頬を、涙がボロボロと零れ落ちた。