薄明かりが差し込む寝室。
その光に、私は慌ててベッドから飛び起きた。
いつの間に寝ちゃったんだろう……。
そんな事を思いながら、隣で眠る稜君に、視線を移した。
だけどそこにあるはずの、稜君の姿がない。
「……え?」
まさか、もう帰っちゃったの?
背中に冷たい何かがスーッと落ちる感覚がして、心臓がバクバクと音を立て始める。
だって、ちゃんとお見送りがしたかった。
今日だったら、空港まで行って、ちゃんと笑顔で送り出せたのに。
取りあえず、電話をしてみよう……!!
そう思った私は、慌てて毛布を裸の体に巻き付けると、リビングへの扉に向かおうと立ち上がった。
「うわっ!!」
「えっ!?」
だけどノブに手をかけた瞬間、向こう側から開かれたその扉に、慌てて一歩後ろに下がる。
「ビックリしたぁー!」
そんな言葉と共に、ゆっくり開けられた扉の向こうには……
「稜君っ!!」
「へっ!? 美月ちゃん!? ど、どうしたのっ!?」
目を真ん丸にする稜君の姿があって、私は思わず、その胸の中に飛び込んだ。
「帰ったかと思った」
ちょっと不貞腐れてそう言うと、呑気な稜君は、人の気も知らずに“あははっ!”と、楽しそうに笑う。
「まさか! ちゃんと起こすよー。そんな離れ方したら、美月ちゃんが起きた時に悲しいじゃん! 俺だって、そんなのイヤだし」
「はぁ……。朝から心臓がバクバクした」
「ごめんごめん」
私の頭をポンポンと叩いた稜君は、もうすっかり服を着て、何故か腕まくりをしていた。