そこまで言って言葉に詰まってしまった私の頭を、稜君は少し悲しそうな笑顔を浮かべながら、ゆっくりと撫でた。


「ごめんね」

「え?」

「もっといっぱい電話出来たら、そんなに無理させなくて済むのにね」


ダメだ。
まだ言葉が全然足りない。

稜君にこんな顔をさせたくて、話をしたわけじゃないのに。


「でもね、稜君。私、もう大丈夫!」

「へ?」

元気よく宣言をした私に、稜君はそれまでの表情を一変させ、目をパチパチさせる。


「いっぱい考えて、これからは、好き勝手にメールとか電話とかをしてみる事にした!」

「……美月ちゃん」


“この時間に電話したら、疲れてるかな?”

“受信音で目を覚ましちゃわないかな?”

そう思って連絡が出来なくなっていた事を、ジッと目を見つめる稜君に、洗いざらいぶちまけた。


すると稜君が、それに困ったように笑って、「なーんだ」なんて言葉を零すから、私は目を大きく見開いて首を傾げた。


「やっぱり“以心伝心”だ」

「どういう事?」

私の問いに、稜君はふわりと笑って思いがけない返事をした。


「俺も、同じこと考えてた」

「え? そうなの?」

「電話かけたいと思っても、日本だと、とんでもない時間だったリするし。丁度いい時間まで起きてようと思うのに、疲れ果てて寝ちゃったり」

「……うん」


――なんだ。

私たちは、遠い空の下で、同じ事を考えながら、同じ時間を過ごしてたんだね。


「今回のは、良くない“以心伝心”だったね」

「ホントだね」

こうしてちゃんと話す事が出来れば、こんなにも簡単に解決出来ちゃうのにね。


「これからは、俺も好き勝手やらせてもらうから」

「うん」

「だから、もう一回約束!」

「……え?」