「ねー、稜君?」

「んー?」

「じゃーどうして下に来てくれたの?」

「んー……取りあえず、中入って」

私の問いかけに、カギ穴にカギをさし込みながら答えた稜君は、私の質問には答える事なく玄関の扉を開けた。


――そして、その扉がパタンと閉まった瞬間。


「ねぇ、りょ――……んんっ!」

彼の名前を口にしかけた私の後頭部に手を回し、そのまま強引に唇を塞ぐ。

始めは啄むように、次第に深いもの変わっていくキスは、漏れ出る吐息さえ許さず、私の頭をジンジンと痺れさせる。


私の舌をからめ取る稜君の舌は、すごく熱くて……。

それを感じる度に胸が息が苦しくなって、クラクラする。


「りょ……くん」

「うん」

その少し低い声にも、

「美月」

そっと囁かれた、自分の名前にも。

どうしようもないくらい、胸が震えてしまう。

少しの余韻を残したまま、ワザとらしく音を立てながら離された唇。


「やっぱり、ダメだな」

唇を離しただけの近距離で、私を見つめる稜君の熱い息が、また唇を湿らせた。


「ごめんね」

「……」

「もしも美月ちゃんに好きなヤツが出来ても、譲れそうにないや」

「……え?」

「俺、そこまで大人にはなれないみたい」

「んん……ッ」

そのまま再び重なった唇に、私は思わず身を捩る。

さっきよりも、もっともっと深くて激しくて――けれど、すごく優しいキス。


体の力が抜けて、膝がガクンと折れた私の腰に、彼の腕がスッと回った。

そしてそのまま、息を切らせる私の首筋に顔を埋め、しっとりとした舌を這わせる。


「……っ」

久し振りの感覚と彼の熱い息に鳥肌が立ち、ゴクリと息を呑む。

でも、体は正直だ。


もっと触れて、もっと稜君を感じさせて欲しくて、もっともっと、私を感じて欲しくて。

背の高い彼の首に腕を回して、体を寄せた。