杉本さんを終始圧倒していた稜君が、ハラハラ?

「どういう事?」

「んー? さっきの嘘だもん」

「え? “さっきの”って?」

聞き返した私に稜君はにっこりと、見惚れてしまうほどに可愛い笑顔を浮かべると、信じられない言葉を口にしたんだ。


「携帯、見てみなよー」

「あぁ、そっか! 繋がったままだったんだね!」

稜君の言葉に、ポケットにしまっていた携帯を取り出してみたけれど……。


「あれ?」

開いた携帯は、待ち受け画面のまま。

でもちょっと待って?

私、ちゃんと電話切ったよね?


「……切れてるよ?」

「うん、そりゃそうだよ。繋がってたなんて、大嘘だからねー」

「えっ!? じゃー、録音っていうのは!?」


つい大声を出してしまった私を見て、ケラケラ笑った稜君は、

「そんなの、してるワケないじゃーん!」

飄々とそんな言葉を言い放ち、降りてきたエレベーターに乗り込んだ。


「だってあの人、俺がいない間に美月ちゃんに嫌がらせとかしそうだったじゃん?」

乗り込んだエレベーターの壁に寄りかかり、彼は腕を組んで眉間にシワを寄せる。


「う、うん」

「だから、釘刺しといたっ!」

「……」


驚き過ぎて言葉を失う私とは対照的に、稜君は「上手くいって、よかった~!」なんて、指先でカギをクルクル回しながら、鼻歌を歌っていて。

職業柄、肝が座っているんだろうか…。

エレベーターが止まってドアが開くと、呆気に取られる私の手を引いて、部屋に向かって歩き出したんだ。