それはわかってる。

心配そうに私を見上げる結衣に、小さく頷いた。


「うん。そうだよね」

「最近、稜君とは?」

「んー……まぁ、ボチボチかな」

「そっかー」

“忙しくなるかも”という言葉通り、最近彼は本当に多忙みたい。


「でも、メールとかはだいぶ減った気もする」

今までは、毎日三、四通届いていたメールも、最近は一通だったり……こない日もあったり。


「でも、私も一緒だから。最近忙しくて、家に帰ると寝ちゃうんだよね」

「そっかー。遠距離の大変さは、本人達にしかわからないからね。杉本さんの事も含め、美月が頑張るしかないよね」

それに更に、「私は断然、稜君派だけど」なんて付け加えるから笑ってしまう。


「だから、杉本マネージャーは関係ないし」

「まぁ、いづれわかるでしょ」

そのまま勢いよく目の前の紅茶を飲み干した結衣は「じゃー私は、このあと合コンだから!! 彼氏見付けてくるからっ!!」と、元気よく立ちあがり、帰って行った。


部屋に取り残された私はというと、カバンの中にしまったままだった、杉本マネージャーの名刺を取り出し、それを裏返す。

そこには、走り書きされた“プライベートの携帯番号”。


私を狙ってる?

それってつまりは、恋愛対象として見てるって事?


「そんなワケないじゃん」

蘇った結衣の言葉を払拭するように頭をフルフルと振って、名刺を机の引き出しにしまい込む。

そんな私を、足元で不思議そうに見上げていたポーキー。


「大丈夫。……何でもないよ」

ゆっくりと、その頭を撫でて、笑いながら小さく呟いたんだ。


何でもない。

だって、私の気持ちが変わる気配なんて全くないし、今でもこんなに、稜君に逢いたいって思ってるんだから。