私がこんなに弱いから、稜君にそんな言葉を口にさせてしまう。

ごめんね、稜君。
せっかくの時間が……。

瞳を閉じて、一度長く息を吐き出した私は、ゆっくり目を開けた。


「MVP楽しみにしてるからね」

「え……?」

「有給取れたの、言うの忘れてた!」

笑顔を向けた私に、稜君は少しだけホッとしたような顔をして笑う。


知らない土地で、知らない人達と、新しい事を始める稜君と、慣れた土地で、大切な人の応援をしながら暮らす私。

どう考えたって、稜君の方が辛いに決まってる。

だから私は、笑ってないといけないよね。

稜君が、心から安心出来るように……。