「なに……それ」
「ねー」
「エロッ!!」
「はっ!?」
目の前の結衣の突然のその発言に、私は素っ頓狂な声を上げた。
稜君から移籍の話をされた数日後、モヤモヤする気持ちを落ち着けたくて、結衣に、ここ数日にあった出来事を話していたのだけれど……。
「だって、エッチの時だけ呼び捨てとかっ!! エロい!! 萌える!!」
なんかもう……結衣の注目点は、物凄くズレている。
「ちょっと!! デカい声でそんなこと言わないでよ!!」
「いやー、稜君あんな可愛い顔してエロいわぁ」
「てか、そこじゃないから! 大事なのは、そこじゃないから!!」
いい加減そこから離れてもらいたいのに、いつまでも稜君をエロ呼ばわりし続ける結衣に、私は思いっ切り突っ込みを入れる。
「わかってるー。ちょっと言いたかっただけだし!! それにしても、移籍ねぇ」
紅茶を啜りながら、ちょっと遠くを見つめた結衣が、ポツリと呟いた。
「まぁ、あんだけのプレー出来る人が、国内に留まってる方が不思議ではあったよねー」
「そうなんだけどさぁ」
私もそう思うんだけど。
「でも移籍に関しては、身近に航太君っていう人もいるわけだし」
「……うん」
「美青ちゃんに相談とかも出来るだろうし」
そこに関しても、同意見。
――だけど。
たかが一年、されど一年。
きっと、ずっと付き合ってからの一年だとしたら“一年くらい!”と思えたかもしれないけど、付き合い始めてすぐの一年では、やっぱりちょっと違う気がする。