会場であるレストランに入ると、そこは何やら異空間。

おねぇーの友達もいるけど、やっぱり目立つのは、たくさんの有名なサッカー選手。


「圧巻」

ポツリと呟いた私の肩が誰かにポンポンと叩かれて、ゆっくり振り返ると、そこには式場の受付にいた最上さんが立っていた。

「あ……どうも」

今更ながら、何を話していいのかわからず、そんな言葉が口をついて出る。


「どうも! 妹ちゃんと……」

だけど目の前の最上さんはと言うと、慣れた様子でにっこり笑顔を浮かべ、隣の結衣に視線を移す。


「結衣です。幼馴染なんです」

「はっはじめまして!! 中川結衣ですっ!!」

サッカー好きの結衣にとっては、きっと倒れてしまいそうな程のこのシチュエーション。


「結衣ちゃんかぁ! 可愛いねー」

「……」

そして、さっきどこかで聞いたようなセリフを、また口にする最上さん。


「ちょっと最上さん! 何回言ったらわかるんですかっ!!」

「なんだよ、稜。もう戻ってきたのかよー」

何故かガッカリした様子で振り向いた最上さんの後ろには、両手にキレイな色の液体が入ったグラスを持つ、稜君の姿があって……。


「美青ちゃんの妹さんに変な事したら、俺が航太に怒られるんですから」

ブツブツと文句を言いながら、唇を尖らせて最上さんをジロリと睨む。


「変な事なんかしてねぇよ! しかも、今話してたのは結衣ちゃんだもん」

「はぁ……。そうですか」

呆れたように溜め息を吐きながら項垂《うなだ》れる稜君に、思わず噴き出してしまった。

だって、なんだか可愛すぎる。


そんな私を、一瞬驚いたような表情で見た稜君は、次の瞬間、

「笑わないで下さいよー。こっちは最上さんの暴走を止めるのに、必死なんですから!!」

初めて見せる柔らかい表情で、ふわりと笑った。