「航太みたいに、カッコつけた事は出来ないけどね!!」
それって……。
試合でゴールを決める度、おねぇーにサインを送る航太君。
彼がしているような事を、稜君が私にしてくれるって事?
おねぇーでもない、彼女でもない私が、彼にそんな事をしてもらってもいいの?
戸惑いがなかったわけじゃない。
「じゃー、一個……いい?」
「もちろんっ!」
それでもこうして、二人きりの約束をしたいと思ってしまうのは、やっぱり彼の事が大好きだからなんだと思う。
「MVPがいい!」
元気よく言い放った私の言葉に、稜君は元から大きな目を、ますます大きくしたあと、
「了解!! じゃー約束ねっ!!」
自信あり気にそう言ったのに。
「でもさぁ、MVPって意として取れない気もするんだけど」
そのまま困ったように頭を抱えるから、それがあまりにも面白くて、私は大きな声を上げて笑ってしまった。
「美月ちゃんがいてくれてよかった」
私の笑いもおさまって、静まり返ったその場所に響き渡った稜君の声。
驚いて彼に視線を向けると、目を細めながら、すごく優しい笑顔を浮かべていて……。
だから私も、稜君に自分の素直な気持ちを伝えたいと思ったんだ。
「私も、稜君の隣にいられてよかった」
視線の先の稜君は、一瞬驚いたような顔をしたけれど、目が合った瞬間、二人でクスクス笑ってしまった。
それが何だか、くすぐったくて……。
だけど、胸がすごく温かくなったんだ。