ゆっくりと歩いて、この前と同じように草の上に腰を下ろした稜君。
その隣に、私も腰を下ろす。
「美月ちゃん、ありがとう」
それと同時に、あのメールと同じ言葉が稜君の口から聞こえて、私は小さく首を振った。
「私は……何も」
だって、本当に何もしていない。
何も出来なかった。
今だって、彼にどんな言葉をかけたらいいのかがわからない。
でも稜君は、そんな私を見てにっこり笑いながら、思いもよらない言葉を口にした。
「美月ちゃんのおかげで、最後にばーちゃんの笑った顔、見られたんだよ」
「え……?」
当然だけれど、私は彼のお婆ちゃんに会った事なんてない。
言葉の意味がわからずに、稜君に視線を向ける。
「オレンジ色の灯りの話」
「オレンジ色?」
「そう。お祭りの、屋台のね」
彼の飛び飛びの話にますます混乱しながらも、その言葉の続きを待った。
「あのライト見ると、切なくなるって話あったでしょ?」
「うん」
「きっと終わりが分かってるからだって」
「……」
「あれ、俺が小さい頃に、ばーちゃんに言われた言葉なんだよ」
「そう……だったんだ」
自分の言葉みたいに言ったけど、実はただのウケウリだったんだと言って、まるで思い出を楽しむように、少しだけ口元を綻ばせる。
「ばーちゃんが死んじゃった日も、お見舞いに行っててさ。何でかわからないけど、美月ちゃんの顔が浮かんで……。ばーちゃんに言ったんだよ」
「何て?」
「“同じ気持ちの人、やっと見つけたよ”って」
こんな時にも拘らず、彼の言葉と表情に、大きく高鳴ってしまう私の胸。
「そしたらばーちゃん、すごく嬉しそうに笑って……本当にちょっとだけ頷いて……」
そこで稜君は、言葉を詰まらせ、俯いてしまった。