亜子によって、好都合な言葉…
そう思える筈なのに、亜子の心は逆に痛む。

心の何処かで、止めて欲しかった。
死なせれば良かったなんて言わないで欲しかった。
ー相手になるなんて言葉、聞きたくなかった。
でも…これが私が選んだ道なんだ。
最初からもっと早くこうなる筈だった。
運命に抗うような真似はしない…。
この現実を、受け止めるしか無いんだ。
亜子は龍の胸から離れた。
涙を見せることなく、話し出した。

「分かった…今までありがと…ー」


やっとその言葉を言い終わると、涙腺が崩壊した。
龍に見られないように、走ってその場から離れた。
彼は当たり前のように、亜子を追う事をしなかった。

亜子の様子を見て、龍も心が痛んだ。
俺は耐えなくちゃいけない。
木陰の一族の頭領として、耐えなければ…。

抱きしめたくなる想いを一方的におさえる…。
指輪の事件が起きたあの日のようにー。


神様、何故私なのですか…?

何故この時代に、この家に、私を産んだの?
生きていても辛いだけ。死ぬのも怖い。
私はどうしたら良いの?

教えて。教えてー。