厨房には龍と悠の姿があった。
楓も入ってきた。
「亜子ー!!美加ー!!」
馬鹿みたいに笑顔で二人を呼ぶ。
美加が「何?」と歩み寄っていったので、亜子は楓の隣にチョコンと座った。
「…あんまり迷惑かけてやるなよ」
楓が亜子を説教するように言う。
「楓も心配してくれてたの?」
逆に質問すると、楓は顔を赤あめてそっぽを向いてしまった。
ははは、と亜子は笑った。
龍はというと、ずっとボーっとしている。
楓と悠がここにいるのは、彼を心配してついて来ただけなのかもしれない。
「龍様!!」
おだやかな会話の途中に、下っ端の杭が突っ込んできた。
彼は相当慌てていて、汗が頬を伝っている。
「どうした?」
龍が立ち上がって杭に走っていく。
「葵殿が!!きています!!」
「!!!」
一向に緊張が走った。
中庭に行くと、そこには葵がいた。
そばには部下がいて、葵を固めている。
葵は一人で、どう考えても不利だった。
「よー、龍」
葵が余裕そうな笑みを浮かべて龍に話しかける。
龍は悔しそうに、憎しみのこもったような顔で葵を見る。
葵はそれを見ると更に笑い始めた。
「もう俺は裏切り者扱いか」