目が覚めると、昨日とは違う場所で、布団をかけられて寝ていた。
思わず起き上がると、外の景色から居場所が分かった。
ー昨日と同じ、唯の屋敷だった……。

今何時だろう。
皆心配してるよね…。
そろそろ帰らなくちゃ。
「帰るのか？」
「わっ!!」
振り向くと後ろには唯がいた。
気配を消すのが得意らしい…。

「うん、帰る。皆心配してるし…」
「そうか…」
唯は寂しそうにすると、入り口まで送ってくれた。
「また来いよ？」
そんな優しい言葉を付け加えて。

「うん!!」
亜子は満面の笑みで笑った。
元気に手を振り、その場を後にした。






しばらく歩いていると、向こうから人が来ているのが分かった。
この道から来るという事は…身内の誰かだ!!
亜子は美加を期待してその人物を見る。
しかし…そこには予想外の人物がいた…。

「龍…様？」
その声を聞くと龍も気付いたのか、走ってこちらに近付いて来た。
気まずさを堪えて亜子が待っていると、龍は亜子を抱きしめた。

しかし、それはあまりにも抱きしめるという言葉には釣り合わなかった。
力強く亜子の背中を固め、逃がさない。
拘束されているようで怖かった。
男の人の力の強さを初めて知った…。