横に抱きしめる形で、2人は寄り添っていた。
驚いてパニックになっている唯。
しかし、亜子を見てその態度は変わった。
「…泣いてるのか…?」
亜子の目からは涙が溢れ出ていた。
それは止まることなく流れ続けている。
ー唯が悪い訳じゃない。
話を聞いて、思い出してしまった。
少しだけ、自分の過去を…
「どうした!?」
唯が心配している顔で亜子を見つめる。
それでも流れる涙は止まらない。
「私も、同じような体験したから…」
「!!」
やっと出た言葉を聞いて、沈黙する唯。
しばらくすると亜子の背中をさすり始めた。
その行為が、何だか安心する。
「私が物心ついた時はもう、今の所にいたの。でも、前の記憶も少しだけ残ってて…。大切な人を失って泣いてた…」
亜子の父は、亜子をかばって死んだ。
その光景が頭に焼きついて離れてくれない。
もっと他の事を思い出したいのに。
私に過去の記憶はない…。
ーねぇ、私の肉親様。
今なにをしているのですか?
私に…家族はいるのですか?
頭が痛くなって、亜子は唯を抱きながらグッタリとした。
「おい、大丈夫か!?」
唯が人を呼ぶのが分かった。
だけど…私の体は動かなくて…。
そのまま意識を失った。