「…家族みたいなもんだった」
悠が喋り始めると、美加は作業をやめて彼の隣に座る。
これから話される事実を、受け止める為に。

「誰かを失うときは、どんな形であれ辛いんじゃき。
もう二度と繰り返さないって、決めてたのに…な」
深い傷を掘り返したように、痛んでいる悠の心。
彼の過去に起きた辛い体験が、心の中で蘇ったのだろう。
普段の明るい悠からは考えられない程、弱く見えた。

「…」
何て声をかけたら良いのか分からない。
だけど、この人を…元気付けてあげたい。
そう思った時、不意に悠の顔が近付く。
彼は寄りかかるようにして、美加の肩に頭をのせた。
美加はその頭を抱きしめ、目を閉じた。

ー大丈夫。
このとき私達は、そう思っていた。





その日の夕方、亜子は洗濯物をしていた。
龍や悠は昨日戦闘をしたにも関わらず、鍛錬をしている。
本当に真面目な人達だなあ、と亜子は関心していた。

「…ん?」
亜子が外を見ると、昨日であったあの少年がこちらを見ていた。
用事があるのかもしれない、と亜子は立ち上がり入り口まで走ったが、もう少年はいなかった。
「…何だったんだろ?」
すると、地面に指輪が落ちていた。
それは、亜子が龍から貰った指輪と同じだった。