拝啓ー○○様。


悲しかったり、怒ったり、
毎日が楽しかった訳ではないけど
あなたといた日々は、私にとって
大切な思い出です。

ドキドキして、悲しくなって、
でも嬉しいようなこの気持ちは、
きっと私の中で永遠に続きます。

ずっと、愛しています。




亜子より。











……ー


桜の花がパラパラと舞う。
亜子はそれを見ながら、悲しい気持ちに浸っていた。
今のこの時代に、こんな美しい花は似合わない。

亜子は自分の指にはめられている指輪を見つめた。
太陽に照らされ、綺麗に輝いている。


ー今、日本は身内で戦争をしている。
それが何故なのか、奥の深い所までは、まだ15歳の亜子には分からない。
ただ戦争をしなきゃ解決できない問題ってことは良く分かっていた。

それでも、亜子は戦争が嫌いだった。
いつ死ぬか分からない恐怖が常にあるのだから。

「亜子ーっ」
ふと後ろを振り返る。
そこには誰もいなかった。

「上だよ!」
声のとおりに上を見る。
屋敷の廊下から、美加が姿を覗かせていた。
美加は、亜子の大親友だ。

「何ー?」
「そろそろ戻ってきなよー!」
亜子は呉羽龍という人をリーダーとする城に仕えていた。
龍はまだ18歳の若造だが、その性格や風貌・実力などから慕われている。
呉羽の一味は雑用係を10人、下っ端を60人、大将が3人、そしてリーダーである龍が上にたつという構成。

亜子は雑用係だった。
食料作りや洗濯等の任務が当てられるが、そんなに厳しい訳ではなく、しばられることは一切なかった。
今も、亜子だけ一人外に散歩に行っていた。