会社とカフェがある駅から、電車で20分。歩きで15分。

単身者用のマンションに帰り着いたことりは、玄関を開けるなりドアを背にずるずると力なくへたり込む。

「つ、疲れた・・・・すっごい疲れた。」




風呂から上がるや勢いよく冷蔵庫を空け、常備している缶ビールや缶チューハイを取り出し、大きな音をたててテーブルの上に置く。

毛足の長いシャギーラグに座り、乾いた音をたてプルタブを空けると一息に缶を煽り喉を潤した。

「ぷはっ!」

喉を鳴らして半分以上飲んだところで、机に叩きつけるように缶を置く。

「何あれ!最初、丁寧語てゆーか敬語だったでしょ!?何あんな態度変わるの!?最後遠慮なんてなくタメ口だったわよ!?」

濡れた髪を乱暴にタオルで水気を拭いながら、ことりは「生意気!」と繰り返す。

「私が何したってゆーのよ!いや、ふったけど、でもでも!携帯持ってかなくたっていいじゃない!あ~~もうっ!むかつくー!」

一人、「あー」とか「うー」など奇声を発しながら、足をばたばたと暴れさせること数分。



「・・・・・疲れた」



暴れるのを止め、残っていたビールを飲み干す。そしてもう1本、りんごの写真が缶を飾るチューハイのプルタブを空ける。


「・・・ちゃんとした答えってどう答えろっていうのよ」




一人ごちて、また缶の中身を煽った。