「付き合ってください」


言われたことは初めてではないが、好意をもってもらえたであろう事実に心が躍った。

恋愛は面倒だと思ってもいるが、単純にあったのは異性に好意を持たれた女子としての喜びだ。カフェでの告白というのもなかなかにドラマチックなもので、憧れたこともあった。

けれど、それは例えば相手が自分と同じ社会人であればの話であり、相手が高校生というなら全部変わってくる。

単純に考えて25才になった自分と、まだ10代の高校生。

価値観も、興味のあることも、考え方だって違う。

20代前半の職場の後輩ですら、ことり達2年目に言わせれば「子供」なのだ。
それなのに高校生だなんて悪夢でしかない。


「気持ちは嬉しいけど。ごめんなさい。」


出来るだけ冷たく、事務的に淡々と答える。


「他に好きな人がいるんですか?」


目に見えて、しょんぼりと肩を落とす彼に、胸がちくりと痛んだ。



「そ、そういうわけじゃないけど。」


つい正直に答えてしまったことに気づいたことりは慌てて口元を手で覆うように抑える。


「まさかとは思うけど、俺が高校生だから駄目ってこと?」
「うっ・・・!そ、そんなことは」

図星を刺され、焦ったあまりにことりは掘らなくていい墓穴を掘ってしまう。

引き吊った笑いを浮かべながら、内心では自分でも「そうだといっているようなものじゃない!」とあさはかな発言に頭を抱えていた。



「・・・・そうか、わかったよ」

ため息交じりの彼の答えに「あれで良かったのか?」と疑問に思いながらも、わかってくれたことに安堵し表情を明るくする。


目が合った彼はにっこりと笑っていた。
けれど、その微笑にことりの背を冷たい冷気が流れていく。




目が笑っていなかった。