「だったらさっさと答えちゃえばいいじゃないですかあ~」


昼過ぎの小休憩、手土産で頂いたケーキを切り分けていたことりは、昨日までのことを瑞穂に話していた。ことりを手伝い人数分の皿とフォークを用意していた瑞穂は、話を聞くや開口一番に言い放つ。


「答えちゃえばって・・・」


フルーツの飾りやクリームが等分になるようにナイフを入れながらケーキを切り分けることりを横目で見た瑞穂は大仰にため息を吐き出す。


「大体、片思いで相手の心がわからないっていうなら悩むのも躊躇うのもわかりますけど、相手は好きって言ってくれてるのに、なんで先輩勿体ぶってんですか」


皿をお盆に置きながら瑞穂は興奮気味だ。


「別に、勿体ぶってなんか・・・」


皿の上に形が崩れないようケーキを乗せ、フォークを添える。後は部署内にいる皆に配るだけだ。ことりの後ろでは瑞穂がコーヒーの準備をしていた。









「勿体ぶってないとしたら何なんです?」


ケーキとコーヒーを配り終わり、部署内で談笑に花が咲く中、自分の分を手にした瑞穂はことりの隣へとやって来た。ことりの隣は今日は出張のため、一日戻らない。それをいいことに椅子も拝借した。


「え!?」


給湯室での話しの続きを迫られ、ことりはフォークを持った手を止めた。

瑞穂も周りに聞こえないよう配慮してくれているのか小声だが、とても部署内で話せる内容ではない。


「それはその・・・・」


目を反らすことりをじとっと見ていた瑞穂は、やがて諦めたように自分のケーキをフォークで一口大にし、口に入れる。グロスを塗ったツヤツヤの唇がフォークを食むのを見ながら、ことりも残りのケーキを口にする。





わからないのだ。
ただ、年甲斐もなく若い男の子にちやほやされて浮かれているだけなのか。

怖いのだ。
あのまっすぐな気持ちに、同じだけ自分も気持ちを返せるのか。




自分の想いが向いている方向が彼と同じなのか。