「俺がたらしこみたいのは、ことりだけなのに」



その内容よりも、崇也の手で遊ばれる一房の髪よりも、何よりも切なさが凝縮された声がことりの全身を耳から爪先まで全て侵食しようとするかのように伝わっていく。



目眩を起こしそうなほどの想いの濃度。

それを知りたいと初めて思ったのだ。



「・・・なんで、私なの?」



間違ったことを尋ねたつもりはないが、崇也の表情が次第に呆れを帯びたものに変わる。


「今更聞く?」
「だって、気になったから」


さっき以上に疲労感が増した崇也の声に、怯みそうになるが、ことりはじっと彼の言葉を待った。彼の中では何か色々なものが葛藤しているのか、小さく苦悶の声を上げている。


「・・・まぁいいか。少しは俺に興味出てきたみたいだから答えてやる」
「・・・・オネガイシマス」



だから何故上から目線なのかと思ったが声には出さなかった。