「・・・柊君ってさ、優しいよね。もてるでしょ?」


面白くない気持ちのまま、言ってコーヒーを一口啜る。


「・・・・は!?」


すらすらと言葉を並べる崇也には珍しく、返事には暫く時間がかかった。

どうかしたのかと思い、カップを持ったまま首を傾げる。

鳩が豆鉄砲食らった顔というのは、まさしく今彼が浮かべている顔ではないだろうか。


「何言い出すかと思ったら・・・・ていうかそれことりが言う?ったく」



額を抑えうな垂れた崇也が呆れ声で苦々しく呻いた。



「・・・・惚れた女の子には優しくするだろ。男だったら」
「う・・・・」
「俺結構、好き嫌い激しいから。タラシみたいだとか思うなよ。不安になりたくないとかそんな理由も却下」


眉を怒らせて、心外だと言い切った崇也に返す言葉もなかった。



(別に断る理由にしたかった訳じゃなかったのにな・・・)



ただ、もっと違う反応を予想していただけに、少し拍子抜けした。



(ってもっと違う反応ってなに!?)



自分の内心に自分で突っ込みながら焦っていることりを面白くなさそうに見ていた崇也は、ゆっくりと手を彼女へと伸ばす。



「じゃあ、教えろよ。あとどのくらい優しくすれば答えくれるんだよ」
「それは・・・・」




ことりの耳横に落ちる髪を一房、指に絡めた崇也は揺れ惑うことりの目をまっすぐ見る。まるで彼女の心の奥まで見透かし、望みを暴き、絡め取ろうとするように。