「あ、あの・・・」

言いたいことはお礼以外に山ほどあった。

それでも一番ことりの気に障ったのは選択肢が「付き合うこと」ただ一つしかなかったことだ。

断られることを考えていないだろう態度に訳も無く苛立つ。

片手を腰にあてた体勢で「早く答えろよ」と腰を屈め、ことりと視線を合わせるという余裕の醸し出された態度も、見下ろされているようで気に入らない。


事実、ことりよりも崇也の方が頭一つかそれ以上身長があるのだから、仕方ないことなのだが、気に入らないものは気に入らないのだ。



「はっきり言うけど、やっぱり無理としか」
「なんで?ことり、俺のこと何も知らないだろ?それなのに無理とか決め付けるの?」


それはつまり知れば必ず無理じゃないと言えるのだろうか。崇也は断られているというのに表情一つ変えなかった。


「言っただろ?年齢差だとか、俺の預かり知らない理由で断るのは認めないって」


俺の話聞いてた?とバカにされているような言葉にことりは表情を引き攣らせたが、頭を強く振った後、無理やりに笑顔を浮かべる。


「えっと、柊君?一応、私、年上なんだけど」
「ああ、そうだっけ」


返事はあっけらかんと返ってきた。まるで「何だ、そんなこと」とでも言いたそうだ。



「それより、私の携帯!返して!」
「・・・ことりがちゃんと答えれば返すよ」



話の腰を折ったのが気に入らなかったのか、崇也はことりから視線を逸らし不機嫌さも露わに背を向ける。



「別に難しいことじゃないだろ。俺はことりに付き合ってって言った。だからそれに答えればいいだけ。簡単だろ?」
「だから、無理だって言ってるじゃない!」
「それ、何で決め付けてるの?俺のこと何も知らないくせに」
「そんなの・・・・・っ」


何も知らないことを逆手に取った口ぶりに、ことりは発しかけた言葉を堪えた。