ことり達の勤める会社は午前中は来客や急ぎの資料作りであったりと慌しいが、昼時は部署内に鳴り響く電話も落ち着くことが多い。


(それにしても今日はやけに静かだなあ・・・・)


思いながら、ぐるりと周囲を見渡せば残っているのはことりや瑞穂を始めとした内勤の事務員ばかり。外勤の人は皆、出払ってしまっているようだった。

凝った肩に手を当て、そろそろ整体かマッサージかにでも行くべきかと思いながら息を吐く。


(どうしようかな。今日)


処理済みとなった書類の束をファイリングしながら、考えていたのは勿論あの彼のことだ。


(いやじゃなければ、オッケー・・・・か)


それを一つの基準として考えれば、答えはおのずと決まってくる。

だが、それにすんなり首を縦に振るほど、ことりは自分が素直じゃないことを知っていた。言った瑞穂あたりなら、あっさり「うん、いいよ」とでも答えるのだろう。


(でも彼がいなければ自分がどうにかなるなんてことはない。)


逆に必要か不必要かで考えたら、答えもまた変わってくる。

一目見た印象でしかないが、相手に困るようには見えなかった。

人を寄せつけそうな明るい雰囲気は黙っていても誰か寄ってくるだろう。




それこそ、彼と同世代で、制服が似合うかわいらしい少女が。





(・・・・仕事しよ)




頭を振って思考を追い払い、昨日の記憶を思い出すのではなく、パソコンの画面に向き直った。