お弁当が出来るまでの間、お店の隅で壁に寄りかかりながら外を走る車のランプをぼーっと眺める。
「沙織さんって意外に大食い? 全部食べるの?」
「……」
「あ! もしかして1つは俺にだったりする?」
「36番でお待ちのお客様、お待たせいたしましたー」
店員の声に手に持った番号札を見れば37番だった。
なんだ次か、と再び視線を外に向けて待っている間にも、28歳内科医は飽きずにしゃべり続けている。
一体何がしたいのか分からない。
こんなにシカトをしているんだから、いい加減相手にされてないって気づいてもいいんじゃない?
とは思うもののそれをわざわざ教えてあげるつもりもない。
こういうタイプは一度口を聞くと面倒だ。
「37番でお待ちのお客様、お待たせいたしましたー」
ようやく番号を呼ばれたので番号札を渡してお弁当を受け取り店から出て会社に向かう。
ここから会社まで歩いて5分もかからない。
そしてこの自称内科医はお弁当屋さんから会社の前までひたすらしゃべり続けた。
マシンガンのように続く言葉たちに、コイツ内科医じゃなくて営業かホストなんじゃないだろうか、と疑いながらも話すことはせずにひたすら無言で歩き続けた。