「暇だったら一緒に食事でもどう? この近くにいい店があるんだ」


肩に置かれた手が馴れ馴れしくて、私は男の質問にも答えずに無言でその手を払い落とす。
それに一瞬眉をしかめたものの、すぐに表情を取り繕った男は再び笑顔を貼り付けて誘いの言葉を並べだした。


その声を後ろに聞いたまま、私は振り返ることなくお弁当屋さんへと足を進める。

彼方には何を買おう。

いっぱいおかずの入ってるものにしようかな、で私は違うの買ってほしいおかずを少し貰うのもいいかもしれない。
お弁当屋さんの扉を開けて中に入っても、男はひるむことなく一緒に入ってくる。


「なに? お弁当買うの? だったらお弁当なんかより……」

「このミックス弁当ご飯大盛りで1つと、生姜焼き弁当1つとサラダ1つください」


レジの前にたつ私の隣でしゃべりだした言葉を聞きもせず遮って店員さんに注文。

ミックス弁当の中身はから揚げやらカツやら天ぷらやら彼方の好きそうなものがたくさん入っていた。


これを差し入れたらきっと喜ぶだろう。

カツを一切れ貰って生姜焼きを一枚あげて、……あ、彼方のとこに行く前に休憩室で彼方にコーヒーでも買っていこう。

ここで買うよりも会社の自販機の方が安い。