舌打ちされようがなんだろうが関係ない。

私には彼方がいるし、真帆と楽しく久しぶりに食事したかったのにこんな場所にいるのだ、これくらい許される態度だと思う。


真帆が舌打ちだけで済ませたことが何よりの証拠だ。


場の雰囲気を取り直すように、テンションを上げたもう一人の女の子が自己紹介をし始めたのをいいことに、私は膝の上で携帯を開く。

予想通り着信もメールもゼロ。 彼方の残業はやっぱり終わってないみたいで無意識に溜息がこぼれる。

とりあえずメールで簡潔に現状を知らせておくことにした。


『真帆に騙され合コン中。あと30分後には脱出予定』


送信完了の文字が画面に浮かぶのを確認してから携帯を閉じる。


自己紹介も終わり、最初のうちは話しかけられていたものの完璧にスルーしながら水を飲んでいるだけの私は、そのうち誰にも相手にされなくなった。

男2人が真帆に話しかけ、残り一人と同僚の女の子が一対一で話している。

完璧に真ん中で孤立状態だから、そろそろ時間もいい頃だろうと鞄を持って立ち上がる。

一瞬目の前に座っていた男が視線を向けてきたけど、すぐに真帆に向き直った。