時刻は18時。

とにかく30分後には店を出なくちゃいけない。

それはこの場を逃げ出したいっていうのはもちろんだけれど、食事をしてインスリンを打たなくちゃいけないからだ。

普段こういう飲み会のときは、店に入る前に血糖測定をしてインスリンを打ったり、注文してからトイレに席を立つふりをして打ちに行ったりすることが常だった。

でも真帆が、この場に来ることを分かっていたのに私にこの店に入る前にそれをさせなかったってことは、ある程度はいて貰わなくちゃ許さないけど頃合いを見て勝手に帰ってよしってことだ。


だからこそ、私は最初の注文でアルコールを頼まずにただのミネラルウォーターを注文したんだけれど、正直合コンのノリが好きじゃない私は、もうすでに帰りたい一心だ。


ふいに視線をグラスから上げると、この場の全員の視線が私に集まっていた。


「……なに?」


一瞬たじろぎながらも、勤めて冷静に返せば真帆に、「沙織の番よー」と自己紹介の順番が回ってきていたことを普段なら聞かない猫なで声で教えられた。


「美崎沙織です。 よろしくするつもりはないので終わりです」


溜息まじりに端的に終わらせれば、ポカンと口を開けた間抜け面の三人がいて、隣の真帆は小さく舌打ちをされた。