家の中に通され、リビングのイスに座った。

オレの前に、コトリと冷たそうな飲み物が置かれる。


「どうぞ」

「いただきます」

のどカラカラだったオレは、すぐに手をのばす。


一口飲んだところで、ハッと気付いた。


このアイスミルクティーの味…


紅茶の濃さと香りと甘さが、オレのド真ん中ストライク。

自分で作ってはみたものの、どうしてもこの味が出せなくて、ずっと謎のままだった。


ああ、今分かった。

子供の頃、お母さんが作ってくれた大好きなアイスミルクティーだ。


「大きくなったわね、順平」

お母さんが微笑みながら、懐かしむような目でオレをじっと見つめる。


「こうやって2人で話すのも、何年ぶりかしら」


何を話せばいいのか分からないオレは、慌てて紙袋を手渡した。


「あっ、コレ!友美さんから預かってきました」

「まあ、何かしら?こんな大きな物」

紙袋の中のグリーンの包装紙を開けようとするお母さんの手元から、ボトッと何かが落ちた。


封筒?


「あら!何かしら?」

床に落ちた封筒を拾い上げるお母さん。


「まぁ…手紙?」


封筒の宛名のところに、

『順子、順平へ』

と書いてあるのが見える。