まず最初に感じたのは、異臭。肉が腐り、乾いた匂いだ。血の匂いは外ほどは感じない。とうの昔に乾ききったのだろう。

床や壁には黒が散っている。あれが血だろう。華が手を触れてみても、なにもついてはこない。

「もう乾いてるよ」

「そうみたい、」



次に目に入るのは、白。

乾いた肉がついたそれは…


「骨…」


男は親族のそれを、嫌そうに眺めていた。華はそれには構わずその側に膝をつく。


「マスターを生んだ人ね…」


なぜ、一目で母親がわかるのか。華が膝をついたそこは、間違いなく暁斗の母親が死んだ場所だ。



「…触れないで。」





それは、小さく、震えていた。





「お願い、そんなものに触れないで…」


華が振り返ると、声とは違って強い目をした男がいた。




「……わかった」


ひしひしと、男が言葉にしない感情を華は感じている。





「…わたしを独占しているのは、貴方よ。」






この最期の時に、男は華を独占したいのだ。

その華が、骨になった母親に構っているのを男は耐えられなかった。














華は、ほころぶように愛に満ちた笑顔を見せた。



















「…ここに決めたわ。」









男の手を握ってから、その場に体を横たえた。