2人が最期の地に選んだのは、2人が出会った街だった。



「覚えている。僕はこのベンチに座っていて…」

「…わたしは、貴方を叩いたりしない、と言ったわ。」

「そう……」




2人の周囲には、つい先ほどまで息をしていたものが倒れていた。

今はもう、事切れている。



そんなものには構わず、2人は並んで歩いていた。





「…ここには、お前の屋敷があった。」


今はもう、そこには屋敷などない。


「貴方の家はあっちだったわ、」



周囲の惨状に反して、空は雲一つない晴れ模様だった。




「肌は痛くない?」

「もう直ぐ終わる。そんなことはどうでもいいのよ、」



日に晒されるのは、これで最後だ。全てが終われば華は日光に怯えなくて済む。




2人は歩き続け、小さな一軒家にたどり着いた。そこは、随分前に大きな事件があり今は空き家となっている。



「…そのまま、なの?」


華から、驚いたような声がこぼれた。


「誰にも手をつけさせなかったんだ。」


男は、ふわりと笑って言った。

ここは暁斗が全てを捨てて、全てを得た場所だ。