淡々と話すユズキの声には、何の感情も乗っていないように思えた。


悲しんでもいなければ、楽しんでもいない。ただ事実を述べているだけ。



ただその事実が、蓮士たちには理解できなかった。





「死んでも、…?」

「そうだよ。僕は1度死んだ。それなのに、体と魂が切り離されることなく、死んだまま生きている。そんな状態なんだ。」






おもしろいでしょう?と首を傾げながら言うユズキに、蓮士と楓は恐怖を覚えた。


どういうことだ。今ここにいるユズキは、幽霊?





「あー、幽霊なんて簡単なものじゃないんだよ。体もあるし、魂もある。どっちかっていうとゾンビに近いかな?劣化もしないし、理性も感情もある、死なないゾンビ。あ、本当は死んでるけどさ。」




ちなみに今は体だけここにある状態。魂は別のところで仕事してるよ、とユズキはあっけらかんと言った。



「まあ僕のことは詳しく言ってもしょうがないよ。僕の目的の話に移ろう。」





あまりにも現実離れした話の内容と、今まで見てきたユズキと今のユズキの差に戸惑っている蓮士たちを置いて、ユズキはどんどん話を進めた。





「僕はね、MOONの駒の1つ。もうマスターには会った?華お姉さんの話は聞いたんだよね?僕は、マスターの目的を遂行するためにお姉さんとあなたたちを監視する仕事を請け負っていたんだ。」




マスター、とは。



蓮士にはピンときた。華の記憶を見ていたから気付いたのだろう。





「あきと、さん…」

「正解!あの人が僕らのマスターだよ。」





蓮士の実の兄であり、MOONを束ねる悪の親玉、全ての首謀者。…そして、華の永遠の想い人。