結都の言葉に反応したのは、李玖だった。
「分かってんのか!?二人とも、家族を殺されてるんだぞ!あの二人に!!そんな奴に会いたいだって?しかも、お前らまさか、アレに惚れてんのか?MOONの月華って言ったら、化けモンだぞ!?」
バッ!と立ち上がって、今まで抑えていたものが堰を切ったように叫んだ。
「俺はあんなのにはもう関わりたくない!人間じゃない…化けモンだった。あんなの、おれには無理だ……。」
頭を押さえ、ふらふらと座り込む。
李玖はそれでも続けた。
「こえぇよ、あんなの…。いつか絶対に殺される。嫌だ……。」
「李玖…」
「お前たちがあれ探すっていうんなら、俺は協力できない。もう、関わりたくない…。」
李玖が零したのは、正真正銘の本音だった。
ずっと、言葉には出来ずに数日間貯めこんでいたであろう本音。
李玖が華と暁斗に感じていたのは、ただただ、純粋な恐怖だったのだ。
そんな李玖に反論する者は誰もいなかった。
確かに、MOONの月華と言えば全世界中で知られる殺人鬼。
恐怖を感じるのは、至極当たり前のことだ。
「…李玖。俺はお前を止めねえ。一緒に来てくれなんて、無茶も言わねえ。」
「俺、も。華を追いかけることは、死と隣り合わせだから。」
「嘉と、楓も。来ねえほうがいいぞ。」
「俺は行くよ。俺が死んだって、悲しむのはここにいる奴らくらいだから。分かってくれるだろう?」
「……俺は、考えさせてほしい。」
嘉の言葉は、蓮士たちが予想していた通りだった。
嘉にも、李玖にも、自分たちに比べれば普通の、家族がいる。
どんな家庭環境であれ、悲しむ人だっているだろう。
「……俺と、結都と、楓は、とりあえず華を探すってことだ。準備が整ったら、ここも離れる。」
「楓…よく考えた方がいい。いつでも、言って。」
死と隣り合わせの環境になんか、できれば誰もつれていきたくない。
蓮士と結都はそう思っていた。
だがそれと同時に、楓の、付いて来るという選択は変わらないであろうということも分かっていた。