「痛くないよ。あなたは、どこか痛いの?」



さっきまで、泣きそうだった。


その問いかけには答えないまま、彼は言った。




「……日陰に入ろうか。暑いでしょう?」


「大丈夫だよ?」


「赤くなってるよ、肌。」




そうだ。少女自身は自覚していないが、少女は本来、日に当たるべきではないのだ。


色素を持たないのだから、紫外線に対する抗体が極端に少ないのだ。


それに、少女の視界は晴れた日の中では非常に狭い。


今だって、彼のことしか見えていないのだ。


周りの様子なんて、光に紛れて見えない。




彼が、木陰に連れて行き、二人並んで腰を降ろした時だった。






ビュオオオオオオオ―――



砂埃が舞って、小さな石や砂が彼に当たる。


少女のことだけはきれいに避けて、だ。




「いたっ!!」



ひときわ大きな石が彼に当たって。


かすり傷だが、彼がケガをした。





「やめて!!!」




風が、風が怒っている。