「ハナちゃんっ!」




男の子は走りより、先ほどまで手をつないでいた人物のほうを見やる。





視線の先にいたのは黒が良く似合う端正な顔つきの男の子で、少し大人びた近寄りがたい雰囲気を持つ少年だった。


どうやら、レンの兄らしい。





倒れたハナの体を抱きかかえ、その様子に気づき、高熱にも気づいたらしい。





……冷たい。



それが、抱きかかえられたハナの意識だった。



その冷たさは常日頃家で感じているものとは違って、どこか心地よい。





初めて感じるはずなのに、どこか懐かしい。

ずっとずっと、長い間この感覚を求めていたような、得も言われぬ満足感。




これまで感じた中で、最も柔らかくて、暖かな感情だった。



安心、を感じたのは、これが初めてだった。