そんな願いも虚しく、男が私の前に立った。


男を見上げる私。


私を見下ろす男。


黒い長めの髪。


前髪から覗く切れ長の目。


筋の通った高い鼻。


そして、口角を上げて笑ってる唇は血のように赤くて……。


街灯に照らされてない肌は、街灯に照らされてる時と同じように白い。


彼は世間で言うイケメンだ。


こんな状況なのに、彼に見つめられ胸が“ドキン”と跳ねた。


でも、彼は人を殺めた犯罪者。


そんな男に胸が高鳴るなんて……。


どうかしてる。


非日常的な出来事に遭遇して頭でもおかしくなったのか……。