“ドサッ”


持っていたカバンが手から落ちた。


その音に気付いたのか、男がゆっくりこっちを向く。


ヤバイ!早く逃げなきゃ。


じゃないと、私もあの女性のように……。


でも、そう思うだけで足が動かない。


ナイフを持ったまま男がゆっくり近付いて来る。


イ、イヤ……来ないで……。


周りを見渡しても誰もいない。


いるのは私と近付く男と血まみれの死体だけ。


大声で叫ぼうにも恐怖心からなのか声が出ない。


お願い……来ないで……。


お願いだから……。