「妊娠したって言ったら凄く喜んでくれてね。お母さんも嬉しくて、2人で抱き合って喜んだのを覚えてるわ」



お母さんはそう言ってクスッと笑った。



「2人で産むって決めて、2人でお母さんの実家に挨拶に行ったんだけど、お母さんの両親。つまり雪乃のおじいちゃんとおばあちゃんに大反対されたのよ」


「えっ?」


「そりゃ、そうよね。お母さんは新卒2年目でお給料も高くない。お父さんは求職中。そんな中、妊娠して結婚したいなんてねぇ。苦労するのが目に見えてるのに、結婚や出産に賛成するわけないわよね」


「それで、どうしたの?」


「お父さんと2人で土下座して頼んだけどダメ。でもお母さんね、どうしても産みたかったの。だから絶縁されてもいいから産むって言って、お父さんの手を引っ張って家を出たの」



あ……。


私と同じだ……。


だからお父さんはお母さんに……。



「そんなことすっかり忘れてて、お父さんに雪乃は君と同じだねって言われて、そこで雪乃を妊娠した時のことを思い出したの」


「そうなんだね……」


「血は争えないねって、そう言ってお父さん、笑ってた。今なら、おじいちゃんとおばあちゃんの気持ちも雪乃の気持ちもわかるな……」


「お母さん……」


「今なら言えるよ……」


「何を?」


「産みなさいって。今更だけど」



お母さんはそう言って再びクスッと笑った。



「お母さん……」



お母さんの言葉に嬉しくてなって、目に涙が溜まっていく。


お母さんは私の頬に指をそっと添えると、流れ落ちた涙を拭ってくれた。